1. ホーム
  2. コレクション
  3. 館蔵品ギャラリー
  4. 建築
  5. 建築部材コレクション

建築部材コレクション

(H30.5.22更新)
 当館では大阪市立博物館時代より、歴史的建造物の建て替えや修復の際、その象徴的な一部分を「建築部材」として収集してきた。収集の対象となる建築は、著名建築家が手がけた建築はもちろん、ランドマーク的な建築(百貨店、劇場など)、公共建築(庁舎、学校など)、宗教建築(神社、寺院など)、地域住民に親しまれてきた建築(銭湯、商店など)、オフィスビル、住宅建築(町家、長屋、邸宅、郊外住宅など)と広範にわたる。これらの建築のうち、外観や内部の特徴的な部分(テラコッタ、タイル、ステインドグラス、照明器具、古舟板、各種装飾など)や人びとが直接手に触れる部分(手摺、把手[とって]、襖など)、建築年代を示す資料(棟札[むなふだ]、幣串[へいぐし]など)を収集してきた。収集品の一部は、『大阪歴史博物館館蔵資料集10 建築部材』でも紹介している。(酒井一光)
宇治電ビルディング 神像テラコッタ

宇治電ビルディング 神像テラコッタ

昭和12年(1937) 本館蔵 関電不動産株式会社寄贈

 西天満にあった関西電力株式会社の前身のひとつ宇治川電気株式会社(宇治電)本社屋は地下1階地上9階建で、4~5階付近に“電球とモーターを持つ神像”というテラコッタ・レリーフが飾られていた。テラコッタとは本来は素焼きのやきものの意味だが、建築では装飾用のやきもので仕上げは施釉されることが多い。このテラコッタ・レリーフは建築設計者の長谷部鋭吉がデザインし、彫刻家・奥田勝が原型をつくり、京都の泰山製陶所が制作した。本品は、その顔の部分である。
双葉温泉 鬼瓦・鰭瓦[ひれがわら]

双葉温泉 鬼瓦・鰭瓦[ひれがわら]

昭和13年(1938) 本館蔵 池永敏子氏・池永節子氏寄贈

 神崎川にかかる三国橋を北に渡ってすぐのところで営業していた双葉温泉の鬼瓦・鰭瓦。大阪では、銭湯を温泉と呼ぶことが多い。本品は玄関の入母屋破風の上にのせられていた鬼瓦で、銭湯の名前の由来となった当時人気の力士・双葉山をかたどったもの。下部両端に鰭瓦がつく。鬼瓦裏面には「昭和十二年四月/大阪志水音左エ門工」と箆[へら]で書かれている。
大阪新歌舞伎座 唐破風[からはふ]装飾

大阪新歌舞伎座 唐破風[からはふ]装飾

昭和33年(1958) 本館蔵 株式会社ベルコ寄贈

 大阪新歌舞伎座は、大阪を拠点に全国で活躍した建築家・村野藤吾の設計で、難波駅前の御堂筋に面して建てられた。外観の特徴は、1~4階まで各階9つの連続唐破風を並べたものだった。桃山時代の雰囲気をたたえながら、過去の建築には類例のない見事な外観を実現させた。本品は、4階の唐破風の上端を飾っていた鬼板や獅子口[ししぐち]にあたる装飾で、2重のリボン型の軽快な意匠である。細部の工夫で全体を軽やかにみせる村野の得意としたディテールといえよう。
近鉄百貨店阿倍野店旧館 装飾格子

近鉄百貨店阿倍野店旧館 装飾格子

昭和63年(1988) 本館蔵 近畿日本鉄道株式会社寄贈

 近鉄百貨店阿倍野店はその前身・昭和12年竣工の大鉄百貨店(久野節[くのみさお]設計)を、昭和32・40・63年の三度にわたり、村野藤吾の設計で増改築された。本品は百貨店の外装を覆っていた「鳥に葡萄唐草文」の装飾格子。2枚1組のアルミ合金の鋳物で、軽量化と量産化を実現し、建物全体に繊細な装飾的効果を生みだした。村野の原案をもとに、彼の没後に完成した。