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ペルシャ文明展-煌めく7000年の至宝-
(H25.10.3更新)
領土 年表1 年表2 出品作の出土地

ペルシャ歴代の王とコイン-アケメネス朝からササン朝を中心に-

西アジアでは古くから物品の価値を銀などの貴金属で換算していた。この習慣の中から、前7~前6世紀にトルコ西部にあったリュディア王国などで最初期のコイン(形状・重量・品質の定められた金属貨幣)が発行された。アケメネス朝は前6世紀半ばにリュディアを征服し、自国のコイン(金貨・銀貨)の発行を始めた。しかしコインの使用は貨幣制度が既に浸透していたギリシャ世界との接点、すなわち地中海側の帝国西部に偏り、その他の地では貴金属の秤量貨幣が用いられていた。その後、西アジアがアレクサンドロス大王とその後継者(セレウコス朝シリア)に支配されると、ギリシャ系コインが発行され、国がコインを発行する行為と貨幣経済が定着していく。アテネを中心とするアッティカの重量制度による銀貨が主流で、表に国王胸像、裏に神像、さらに王名や称号が打刻された。前3~後3世紀のアルサケス朝パルティアや3~7世紀のササン朝ペルシャはこの伝統を受け継ぎ、国の管理下に銀貨を中心に発行した。肖像や神像を刻む基本は同じだが、美術的表現、銘文、宗教観などに民族的特色が見てとれる。コインは経済的役割だけでなく国家や発行者である支配者自身を顕示する媒体としての役割も担っていた。


アケメネス朝ペルシャ

アケメネス朝はリュディアの都でありコインの発行地でもあるサルディスを征服すると、そこでデザイン(リュディア王家のライオンと牛)もそのままの金貨、銀貨を発行した。やがて前6世紀末から独自のコインを発行する。「冠をかぶる人物が、左手に弓、肩に矢筒をかけ、膝を曲げて右方向に向かう」図で、この図柄はアケメネス朝を通して使われた。この人物は、王権のシンボルである弓を持つことからも、帝王または神格化された祖先とされる。金貨(約8.4g)と銀貨(約5.4g)が発行され、ギリシャ人からそれぞれ「ダレイコス」「シグロス」と呼ばれた。また図柄から「トクソテース(射手)」とも呼ばれた。

シグロス銀貨

シグロス銀貨(上)

Silver siglos

前6世紀後半-前5世紀前半
出土地不明
径-1.5 重-5.5g
©National Museum of Iran

表:「左手に弓を持ち右方向に向かう王侯風人物」の図柄はダレイオス1世の時代に始まったとされる。前5世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスは、『歴史』の中で「ダレイオスはできる限り純粋な金でコインを発行した」と記したように、金貨も銀貨も良質だった。
裏:長方形の単純な刻印。

シグロス銀貨(下)

Silver siglos

前5世紀
出土地不明
径-1.6 重-5.4g
©National Museum of Iran

表:上の銀貨と同じく左手に弓、右手に長槍を持ち、右に走る王侯像。アケメネス朝のコインには銘文がないため、発行者や年代の特定は難しい。射手の持ち物や衣装の表現にわずかな違いがあり、年代の明らかな出土例と対照している。ひげの後ろに点があるタイプは、クセルクセス1世の頃の発行とされる。



ササン朝ペルシャ

主要貨幣はパルティアと同じく銀貨(ドラクマ:約4g)である。薄く大きいのが特徴で、玄奘の『大唐西域記』波刺斯国条で「貨に大銀銭を用いる」と記されている。イラン文化の伝統を尊重したササン朝は銘に中世ペルシャ語(パフラヴィー語)・文字を使い、裏に国教ゾロアスター教の拝火壇を示した。表の肖像は右向きが基本で、初期の写実性は次第に形式的な表現となる。王権を表すリボンや球体装飾(コリュンボス)、王冠の形、装身具などの表現に各王の違いがあらわれる。銀貨は賠償金や軍資金としても大量に発行され、領土拡大や交易を通じて国外にも流出した。特に中央アジアなどの交易都市で国際流通貨として使われ、中国などからも出土している。

アルダシール1世のドラクマ銀貨とシャープール1世のドラクマ銀貨

アルダシール1世のドラクマ銀貨(上)

Silver drachma of Ardeshir I

224*-241年
出土地不明
径-2.6 厚-0.2 重-3.9g
©National Museum of Iran

表:球体装飾のついた冠をかぶり、長いひげが特徴の王像。銘「マズダー崇拝者、主アルダシール、イランの諸王の王、神の子孫」。
裏:アケメネス朝の獅子足の玉座がついたゾロアスター教の拝火壇。銘「アルダシールの火」。

シャープール1世のドラクマ銀貨(下)

Silver drachma of shapur I

241*-272年
出土地不明
径-2.4 厚-0.2 重-4.0g
©National Museum of Iran

表:球体装飾のつく城壁冠をかぶり、ひでのある王の右向き肖像・銘「(マズダー)崇拝者、主シャープール、イランの諸王の王、神の子孫」。
裏:拝火壇とその両脇に城壁冠をかぶり長い聖杖を持つ王侯像。銘は右側「(シャ)ープールの」と左側「火」で拝火壇の火がシャープールの聖火であることを示す。


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