“サウンド・オン・フィルム”とは?
■無声(サイレント)時代の傑作や忘れられた作品を、“新たな音楽”とともに甦らせる企画“サウンド・オン・フィルム”。これはPLANET+1(プラネット・プラス・ワン)で月1回のペースで1年に渡って開催してきた特別企画です。
■これまでも無声映画の音楽や弁士を付けての「懐かしの映画」を再現する企画は開催されてきていますが、この“サウンド・オン・フィルム”はそれらとは異なり“新たな音楽”を付けた新しい試み、フィルムと音楽の“ライブ・セッション”であり、新進の作曲家でミュージシャンでもある渡邊崇さんの音楽プロデュースとして実現。渡邊氏はパンク系のロックから実験的な現代音楽、そしてクラシックまで幅広く作曲・演奏できる珍しい存在であり、若い映像作家からも厚く信頼されています。
■この“サウンド・オン・フィルム”第1回は、早川雪洲主演のハリウッドの創設者とも言われるトーマス・インスの『火の海』上映会、その後も、グリフィスの『アッシリアの遠征』、巨匠ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』、フランスの前衛映画『アッシャー家の末裔』、坂東妻三郎のチャンバラ『江戸怪賊伝・影法師』などを経て第10回の記念企画が今回の上映となり、PLANET+1の企画協力のもと大阪歴史博物館で開催する運びとなりました。これまで参加した演奏家が集結し、ミュージシャン同士のセッションも楽しみな「特別編」となります。ご期待ください!!
『路上の霊魂』

●あらすじ●
山奥の製材所の経営者・杉野には許嫁を残して家出した息子・浩一郎がいた。浩一郎はヴァイオリニストになることを夢見て東京に出ていたが音楽界を追われ、妻・娘を連れて故郷に戻ろうとする。しかし父は息子を許さず、浩一郎一家はクリスマスにも飢えることになり……。
1921(大正10)年/松竹キネマ研究所第1回作品/35mm/サイレント/白黒/112分(18fps)
監督:村田実 総指揮:小山内薫 脚本:牛原虚彦 撮影:水谷文次郎 光線:島津保次郎
出演:小山内薫、沢村春子、久松三岐子、鈴木傳明、南光明、蔦見丈夫、岡田宗太郎、村田実、伊達竜子、英百合子
◆初期の松竹に芸術を持ち込んだ小山内薫(おさない・かおる)が主宰した松竹キネマ研究所の第1回作品。本作の登場で、それまでの「活動写真」が「映画」になったと驚きを持って迎えられ、現在に続く日本映画(現代劇)の原点となった。21年はまさに新しい日本映画が産まれた年でもある。
◆1916年(大正3年)大正デモクラシーを推進していた文学者たちが、同時代の日本映画への批判をこめてあらたに「純映画運動」に終結。中心となったのは帰山教正、作家・谷崎潤一郎、新劇作家の小山内薫と田中栄三であった。
◆尾上松之助の時代劇(旧劇)を中心に女形を使った新派劇の映画化をしていた日活(1913年設立)に対抗して1920年に蒲田にスタジオを建てた松竹(1921年設立、野村芳亭所長)は、ヘンリー小谷などを招くとともに近代日本における新劇運動の推進者・「純映画運動」の小山内薫を招いて「松竹キネマ研究所」を設立。ここで最初に製作され、その後の日本映画を決定的に影響付けたのが『路上の霊魂』である。
本作は、シュミットボン『街の子』(森鴎外訳)、ゴーリキー『夜の宿(どん底)』(小山内訳)を元に、牛原虚彦が自由に翻案した。人間の悩みを主題に、二つの対照的な例が並行して描かれる手法にはD・W・グリフィスの「イントレランス」の影響が見られる。1921年春、徳川夢声の説明で世間に公開された。小山内薫は総指揮とともに俳優としても出演。監督は野村実、光線(照明)が島津保次郎、息子役には鈴木傳明(東郷是也)。村田実は20年代末から30年代にかけて日活太秦の、牛原虚彦、島津保次郎の二人は松竹・蒲田の巨匠監督として活躍することになる。
◆なお、溝口健二が日活向島に入社したのが1920年でデビューが23年、小津安二郎が松竹蒲田撮影所に入社したのが23年で27年に監督デビュー、伊藤大輔は小山内の門下でありヘンリー小谷の脚本を経て24年に帝キネの現代劇で監督となった。