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(H25.7.17更新)

第63回 特集展示

新発見!なにわの考古学2009

◆ 平成21年 11月11日(水)~12月27日(日) ◆

毎週火曜日休館

会場
8階 特集展示室
時間
9:30~17:00(金曜は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
観覧料
常設展示観覧料でご覧になれます
主催
(財)大阪市文化財協会、大阪歴史博物館

大阪歴史博物館では、平成21年11月11日(水)から平成21年12月27日(日)まで、8階特集展示室において特集展示「新発見!なにわの考古学2009」を開催します。

この特集展示では、第一に、平成20年度に行った大阪市内の遺跡発掘調査の中から、重要な成果を取り上げます。中央区難波宮跡では、ガラス玉鋳型、ふいごの羽口はぐち、溶けた金属のかす、鹿の角、砥石など手工業生産に関連する遺物が、難波宮ができる以前の地層から出土しました。中央区瓦屋町遺跡では、幕府の御用瓦師である寺島家の瓦生産に関わる遺物のほか、ベンガラ(赤色顔料)・陶器・鋳物・土人形など一帯で行われていた各種の産業を示す資料が見つかりました。

第二に、難波宮跡では古代の朝鮮半島からもたらされた新羅土器が出土しました。これにちなみ、韓国国立大邱博物館が所蔵する現地の新羅土器をお借りしました。難波宮跡出土品をはじめ大阪市域出土の新羅土器と共に展示し、古代の国際交流の一端に触れていただきたいと思います。

<展示コーナー>

  1. 「原始なにわのいとなみ」コーナー
    上町台地西側(大坂城跡)で初めてまとまって見つかった縄文時代後~晩期(4,000~3,000年前)の縄文土器を皮切りに、弥生時代後期(約1900年前)の竪穴建物や弥生土器(長原遺跡)、古墳時代の製塩土器などを展示し、原始なにわのいとなみを探ります。また、6. 「新羅土器が語る古代日韓交流史」コーナーに関連して、朝鮮半島の系譜を引く古墳時代の韓式系土器(長原遺跡)も展示します。
  2. 「古代都市・難波宮とそのひろがり」コーナー
    難波宮跡公園の東側で行われた調査では、ガラス玉鋳型、ふいごの羽口、溶けた金属の滓、鹿の角、砥石など難波宮ができる以前の手工業生産に関連する遺物が発見されました。また、難波宮跡公園内では、奈良時代の後期難波宮の建物が発見され、重圏文軒丸瓦・軒平瓦など宮殿の屋根を飾った瓦が見つかりました。このほか、藤原京と同じ忍冬唐草文軒平瓦(大坂城跡)や和同開珎(天神橋遺跡)といった飛鳥・奈良時代の難波の都市性を示す調査成果を、遺物や写真パネルで紹介します。
  3. 「中世なにわの住人たち」コーナー
    難波宮がなくなった後も、大川の両岸で引き続き経済活動の拠点として発展した難波津(なにわづ)は、中世には「渡辺津わたなべのつ」と呼ばれるようになります。各時期の日常土器や中国製輸入陶磁器(天神橋遺跡)、室町時代の鬼瓦・軒丸瓦(大坂城跡)など、各所にいた住人の痕跡を展示します。また、住吉区の山之内遺跡で見つかった「我孫子あびこ鋳物師いもじ」に関わる鋳造関係の遺物も展示します。
  4. 「豊臣氏大坂城と城下町」コーナー
    大坂夏の陣(1615年)で豊臣氏が滅ぶまでの大坂城と城下町で明らかになった調査成果を展示します。難波宮跡公園の調査で見つかった金属加工関連の遺物や、金箔瓦・金箔土師皿、大坂城三の丸でみつかった桶など木製品生産の跡、さらには大坂城下町の西のはずれとみられていた靭本町1丁目所在遺跡で見つかった「さし銭(紐で連ねた銭貨)」などを展示します。
  5. 「江戸時代大坂の城・町・ものづくり」コーナー
    大坂城天守閣の発掘調査で見つかった櫓跡と刻印のある瓦、焼けただれた陶磁器が示す城下町の大火と町人のくらし、そして中央区瓦屋町遺跡で見つかった各種の産業に関係する遺物などを展示します。特に新発見の遺跡である瓦屋町遺跡では、幕府の御用瓦師である寺島家の瓦生産に関わる遺物のほか、ベンガラ(赤色顔料)・陶器・鋳物・土人形など一帯で行われていた各種の産業を示す資料をまとめて紹介します。
  6. 「新羅土器が語る古代日韓交流史」コーナー
    先に、2. 「古代都市・難波宮とそのひろがり」コーナーで紹介した遺物のなかには、古代の朝鮮三国の一である新羅からもたらされた土器も出土し、難波の国際性を裏付けることとなりました。そこで、大阪市域出土の新羅土器とともに、韓国の古墳より出土した新羅土器を、韓国国立大邱博物館よりお借りして展示します。
<本展覧会で扱う遺跡>
難波宮跡(中央区) 大坂城跡(中央区) 大坂城下町跡(中央区)
上本町遺跡(天王寺区) 靭本町1丁目所在遺跡(西区) 瓦屋町遺跡(中央区)
天神橋遺跡(北区) 山之内遺跡(住吉区)

期間中の関連行事

『展示解説』 :(担当)

第1回 11月21日(土) : 清水和明 (大阪市文化財協会 学芸員)
第2回 11月28日(土) : 豆谷浩之 (当館 学芸員)
第3回 12月 5日(土) : 平田洋司 (大阪市文化財協会 学芸員)
第4回 12月12日(土) : 積山 洋 (当館 学芸員)
第5回 12月19日(土) : 豆谷浩之 (当館 学芸員)
【会場】 大阪歴史博物館 8階 特集展示室
【時間】 いずれも午後1時より30分程度
(11月28日のみ、正午から)
【参加費】 無料(ただし、入場には常設展示観覧料が必要です)
【参加方法】 当日直接会場へお越し下さい

講演会 『大阪の歴史を掘る2009』

「平成20年度大阪市内の発掘調査」
豆谷浩之(当館 学芸課係長)
「秀吉の大坂城と城下町」
松尾信裕氏(大阪城天守閣 館長)
【日時】 平成21年11月28日(土) 午後1時30分~4時30分
(午後1時より受付)
【会場】 大阪歴史博物館 4階 講堂
【資料代】 300円
【定員】 250名(当日先着順)
【参加方法】 当日直接会場へお越し下さい

『新羅土器が語る古代日韓交流史』

特別講座 新羅土器の諸問題
報告1「難波宮周辺にもたらされた新羅の土器」
重見 泰氏(奈良県立橿原考古学研究所 技師)
報告2「出土遺物からみた古代難波の対外交渉」
寺井 誠(当館 学芸員)
【日時】 平成21年11月14日(土) 午後1時~
(午後12時30分より受付)
【会場】 大阪歴史博物館 4階 講堂
【参加費】 無料
【定員】 250名(当日先着順)
【参加方法】 当日直接会場へお越し下さい

国際シンポジウム 古代の難波と新羅
報告1「最近の発掘成果からみた遷都前夜の難波」
大庭重信(大阪市文化財協会 文化財研究部学芸員)
報告2「新羅考古学の最近の調査・研究成果と日羅関係」(仮)
咸舜燮 ハム・スンソプ 氏(韓国国立大邱博物館 学芸研究室長)
報告3「文献史からみた6・7世紀の日羅関係と難波」
田中俊明氏(滋賀県立大学 教授)
パネルディスカッション
【日時】 平成21年11月22日(日) 午後1時~
(午後12時30分より受付)
【会場】 大阪歴史博物館 4階 講堂
【参加費】 無料
【定員】 250名(当日先着順)
【参加方法】 当日直接会場へお越し下さい

※特別講座・国際シンポジウムは文化庁の平成21年度「美術館・博物館活動基盤整備支援事業」です。


おもな展示資料

展示資料数:約400点
「新羅土器」詳細へ
新羅土器

中央区難波宮跡 飛鳥時代
「ガラス玉の生産を示す鋳型」詳細へ
ガラス玉の生産を示す鋳型

中央区難波宮跡 古墳時代後期~飛鳥時代
「瓦作りを示す瓦笵」詳細へ
瓦作りを示す瓦笵がはん

中央区瓦屋町遺跡 江戸時代

主な展示資料

新羅土器

(1)新羅土器

中央区難波宮跡 古墳時代後期~飛鳥時代

6世紀の終わり頃に朝鮮半島の新羅でつくられ、難波にもたらされた壺の蓋です。ヘラ先で描かれた三角形の文様と、スタンプによる二重丸の文様が特徴です。難波ではこのような新羅の土器や百済の土器がしばしば出土し、当時の国際交流の様子がうかがえます。


ガラス玉の生産を示す鋳型

(2)ガラス玉の生産を示す鋳型

中央区難波宮跡 古墳時代後期~飛鳥時代

難波宮跡公園の西側の発掘調査では、宮殿が造営される前の段階のガラス玉鋳型が出土しました。この鋳型は直径2mmの小さな穴をたくさん穿った粘土の板で、その穴に溶けたガラスを流し込みました。穴の底には細い針のようなものを立てた痕跡が残り、ガラス玉の中央に通す紐穴にしたとみられます(横にある緑色のガラス玉は、製作技法が異なるようです)。この調査では金属生産関係遺物、骨細工に関係する遺物もたくさん出土し、活発に手工業生産が行われていたことを裏付けました。


瓦作りを示す瓦笵

(3)瓦作りを示す瓦笵がはん

中央区瓦屋町遺跡 江戸時代

瓦屋町遺跡は、江戸時代の御用瓦師寺島家が瓦の土採りや窯業を行った場所とみられ、瓦を作るための窯道具や瓦笵が出土しました。軒丸瓦の瓦当面の文様を彫った型である瓦笵は、中央に蓮華の蕾を、その左右に「 神咒寺かんのうじ」「潅頂堂かんじょうどう」の文字を裏表逆に配しています。「神咒寺」といえば西宮市に「甲山大師神咒寺(真言宗御室派)」がありますが、断定には至っていません。「潅頂堂」は密教儀式を行う堂であり、その屋根を飾る瓦が作られたのでしょう。