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近代建築竣工記念絵葉書

(H26.6.11更新)

平成23年6月8日(水)~ 8月29日(月)(予定)

大阪毎日新聞社新築記念絵葉書
大阪毎日新聞社新築記念絵葉書
大正11年(1922) 個人蔵

大阪毎日の新社屋は、鉄筋コンクリート造5階建てでした。市役所屋上より写した写真からは、高層の近代建築がまだ珍しいことがよくわかります。木造建築の屋根瓦の海のなかに巨大な社屋が孤立しています。設計は、大阪建築界の大御所であった片岡やすしが代表をつとめる片岡建築事務所。現場管理に携わったのが、入所して間もない安井武雄でした。安井は、その後独立して、大阪倶楽部(大正13年、大阪市指定文化財)や高麗橋野村ビル(昭和2年)、大阪ガスビル(同8年)などの設計を手がけていきます。

この建物は、「堂島の顔」として市民に親しまれてきましたが、社屋の移転とともに平成4年(1992)に取り壊されました。跡地に建つ堂島アバンザ前広場には、現在玄関ポーチがモニュメントとして復元されています。

大阪株式取引所市場新築記念絵葉書
大阪株式取引所市場新築記念絵葉書
昭和10年(1935) 個人蔵
日建設計の母体となった長谷部竹腰はせべたけこし建築事務所の記念すべき第一作です。難波橋のライオン像とともに北浜のシンボルであったこの建物は、平成16年(2004)の建て替えの際に正面玄関のドーム部分が保存されました。おもしろいことに、この絵葉書には付箋がついていて、「コレガ野村ビルデス 上ヨリ二ツ目下ノ真中ノ窓ガ当店ノ便所デス 一ペンおハイリ下サイ」とあります。野村北浜ビル(大正10年竣工)にオフィスをかまえていた会社の人間が知人に贈った絵葉書なのでしょう。竣工記念絵葉書が実際にどのように使われたかがわかる資料です。

※この資料は、7月18日(月・祝)まで展示した後、7月23日(土)から開催される開館10周年記念特別展「民都大阪の建築力」のため、6階特別展示室にて展示されます。
  伊藤萬商店絵葉書 
       伊藤萬商店絵葉書
          昭和8年(1933) 個人蔵

「天下のイトマン」とまでいわれるほど、戦前日本を代表する商社であった伊藤萬商店の社屋は、創業50年という記念すべき年(昭和8年)に竣工しました。場所は、当時拡幅工事中の御堂筋と本町通りとの交差点南東角です。この建物の竣工記念絵葉書は、建物外観だけでなく、内部の部屋や屋上からの眺望、寄宿舎を紹介したものもあり、その数は全部で12枚という豪華さでした。「繊維王国大阪」を象徴する絵葉書です。

バブル期を経て会社は消滅し、現在跡地には外資系ホテルの巨大ビルが建っています。スイミングスクールにその名を残すのみとなりました。開館以来、当館では8階の昭和初期御堂筋をホワイトモデルで再現したコーナーの壁面に、沿道にあった代表的な建物のファサードを描いて紹介してきました。実はこの建物もあります(右図)。ぜひこちらもあわせてご覧ください。

船場小学校・同幼稚園増改築校園舎絵はがき
船場小学校・同幼稚園増改築校園舎絵はがき
大正12年(1923) 個人蔵
大阪市立の小学校で最初に鉄筋校舎を実現したのが船場小です。すでに明治36年(1903)に赤煉瓦造りの2階建て校舎を建設していましたが、さらに地上3階・地下1階の鉄筋校舎が新築されました。この絵葉書の右下の絵にも鉄筋新校舎とともに煉瓦校舎が描かれています。また新校舎の全景を描いた左上の絵の、特に左下をみてください。はっきりとは読めませんが、何か字が書かれています。おそらくこの絵の作者のサインでしょう。船場小新築以後、他の小学校でも、競うように鉄筋校舎を建設していきます。その際、たいていの小学校では、この船場小にならって建物の全景図とその鳥瞰ちょうかん図を画家に描かせ、大切に保管するとともに、それを絵葉書や記念誌などに印刷して、関係者に配布したのでした。今でもこれらの絵のうちのいくつかは、市内の小学校に残されており、特別展「民都大阪の建築力」でもご紹介します。どうぞご期待ください。
汎愛小学校改築落成記念絵葉書
汎愛はんあい小学校改築落成記念絵葉書
大正15年(1926) 個人蔵
竣工当時、「日本一」と称され、世界的にみても高水準の設備を備えていたのがこの汎愛小でした。この小学校の絵葉書については、すでに当館でも写真パネルで紹介しています。7階「都市の構造」コーナーです。 大学の研究室も及ばぬほどの理科室、一般にも開放された図書室、和洋二つの作法室、屋上プールなど、全ての施設が豪華で破格の校舎でした。野村財閥のお膝元という土地柄からか、設計者は安井武雄です。安井は野村系会社をクライアントにしていました。高層の鉄筋校舎は小学校の校舎としては豪華すぎると考えられたのでしょうか、昭和17年の中等学校増設の際、汎愛中学校(現汎愛高校)に転用されることになり、小学校自体は廃校となってしまいました。

特別展「民都大阪の建築力」開催を記念して、戦前大阪を代表する近代建築の竣工記念絵葉書の数々をご紹介します。竣工記念の絵葉書は、建物外観、代表的な部屋、屋上からの眺望などを紹介するものから構成され、たいてい袋入りにして、関係者に配布されたものです。内部の部屋などについて詳細な記録が残っていない建物については、絵葉書がそれを知る手がかりとなります。建築史的に貴重な資料となりうるものです。

今回このコーナーで紹介する建物は、部分的に保存・復元されたものを除けば、解体され、今ではみることができません。著名な建築家や建築事務所による設計であったり、教育史の分野でエポックメイキングな建物であったりと、どれも貴重な建物ばかりです。どうぞ、「民都大阪の建築力」の一端をご覧ください。(飯田直樹)

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