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昭和初期の大阪の趣味家が発行した宝船

(H26.1.28更新)

平成26年1月29日(水)~2月24日(月)予定

江戸時代、元旦または節分に、宝船の絵を枕に敷いて寝ると良い「初夢(はつゆめ)」を見ることができるとの信仰があり、京都や大阪の社寺では宝船の授与がさかんに行われていました。明治時代になって社寺における宝船の授与は廃れていきますが、大正時代中期に京都では田中緑紅(たなか・りょくこう)が中心となって小絵馬・郷土玩具・宝船などを収集する「郷土趣味」という活動がさかんとなり、宝船の授与を望む人たちの要望に応えて、宝船を復興する社寺が増えていきました。

そのような時代背景のなかで、大阪では昭和3年から昭和11年頃にかけて、「浪華宝船会」という趣味家を中心にした会が組織され、会員が独自の宝船を枚数限定で発行し、それを節分の日に集めて回るイベントが開催されていました。

当館には昭和6年の第3回浪華宝船会で授与された100枚余りの宝船が都鳥澄子氏から寄贈され、宝船コレクションのひとつの核となっています。今回の展示ではこのなかから、大阪を代表する趣味家の一人といえる「乙三洞(おっさんどう)」の作品を中心に紹介します。乙三洞は本名を森田誠信といい、戦前に千日前で美術関係の書店を営んでいましたが、自分の趣味の品である郷土玩具・人形・西洋の文物なども扱っていたことから多くの趣味家が出入りし、交流の輪が広がっていました。(伊藤廣之)

ゴンドラ船宝船

昭和6年 乙三洞筆 村上正文堂発行
本館蔵 都鳥澄子氏寄贈
ゴンドラ船宝船
ゴンドラ船を宝船に見立てた絵柄となっています。ゴンドラ船は運河を航行する小型船のため、本来、帆は必要がありません。しかし、そこは創作の宝船ですので、帆船として描かれています。帆の中央には古代中国の想像上の動物で、人の悪夢を食べる「獏(ばく)」の文字が書かれています。船上は楽団の演奏で賑わっています。西洋の文物を好む乙三洞の趣味がよく表現された宝船といえます。

案山子宝船

昭和6年 乙三洞筆 高畑案山子発行
本館蔵 都鳥澄子氏寄贈
案山子宝船
この宝船の発行者は川柳家の高畑案山子です。発行者にちなんで、案山子の帆掛け船になっています。船上には家族と思われる三人が描かれ、案山子の腕にはスズメと見られる鳥が留まっています。のどかな雰囲気が伝わってきます。浪華宝船会の名簿によれば、高畑案山子の名前の横に「壽々屋荘」とあり、住まいは住吉区阪南町中2丁目と記されています。

招き猫宝船

昭和6年 乙三洞筆 柳家支店発行
本館蔵 都鳥澄子氏寄贈
招き猫宝船
乙三洞が作成し、自分の店である柳家支店から発行した宝船です。招き猫が乗った宝船 ということですが、帆掛け船そのものを描くのではなく、語呂合わせにしたいくつかの品を帆掛け船の一部に見立てています。船体部分は高枕(たかまくら)で「た」、帆の桁(けた)は簪(かんざし)で「か」、帆柱は煙管(きせる)の竹「羅宇(らう・らお)」で「ら」、帆が文(ふみ)で「ふ」、そして招き猫で「ね」といった具合です。

フロア / 7階 コーナー / 都市の民間信仰
7階フロアマップ