溝口健二と山田五十鈴、山田洋次と倍賞千恵子、成瀬巳喜男と高峰秀子、増村保造と若尾文子──監督と女優との宿命的な出会いによって生み出された名作を紹介いたします。
日本を代表する巨匠と名女優たち。監督と女優との宿命的な出会いによって生み出された名作4本を美しい35ミリプリントで懐かしの一挙上映!!
優秀映画2014 名作映画傑作選 名匠×女優 その宿命的な出会い! | |
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主 催 | 大阪歴史博物館、NPOコミュニティシネマ大阪、文化庁、東京国立近代美術館フィルムセンター |
協 賛 | 株式会社松竹ブロードキャスティング |
協 力 | 株式会社オーエムシー |
日 時 |
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会 場 | 大阪歴史博物館 4階 講堂 交通のご案内 |
プログラム |
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定 員 | 250名 (当日先着順) |
参加費 | 【前売券】 900円 ※前売券は大阪歴史博物館、シネ・ヌーヴォのみでの発売となりますので、ご注意ください。 【当日券】 一般:1,000円/シニア:900円/高校生以下:700円※2本目のみのご観覧の方は500円でご入場いただけます |
お問合せ | シネ・ヌーヴォ TEL:06-6582-1416 ホームページはこちら
※ご注意:問い合わせ先は大阪歴史博物館ではありません |
プログラム詳細
溝口健二×山田五十鈴
- 『浪華悲歌』
- 1936年/第一映画/白黒/スタンダード/72分
監督・原作:溝口健二/脚色:依田義賢/撮影:三木稔/照明:堀越田鶴郎/録音:加瀨久、水口保美/美術:久光五郎、木川義人、岸中勇次郎
【出演者】
山田五十鈴、梅村容子、大久保清子、志賀廼家弁慶、進藤英太郎、原健作、志村喬
大阪の製薬会社で電話交換手として働くモダンガールのアヤ子(山田五十鈴)が、家族の経済的苦境を救うため、恋人がいるにもかかわらず、言い寄ってきた社長の囲われものとなるが…。家族や恋人のために自己犠牲を行った末に、その自己犠牲が報われる物語がメロドラマだとすれば、本作におけるアヤ子の自己犠牲的な行動は、最後まで報われることはない。本作の見所は、男たちの欲望と卑劣さと弱さの餌食になって転落していくアヤ子の姿を、徹底的に冷ややかな視線で捉えた溝口健二の演出にあるだろう。1930年に映画女優としてデビューした山田五十鈴は、本作で厳しい溝口の演技要求に応えて大女優へと飛躍し、同じ年に再びコンビを組んだ『祇園の姉妹』と合わせて、二人の代表作とした。「キネマ旬報」ベストテン第3位。
成瀬巳喜男×高峰秀子
- 『稲妻』
- 1952年/大映(東京)/白黒/スタンダード/87分
監督:成瀬巳喜男/原作:林芙美子/脚本:田中澄江/撮影:峰重義/照明:安藤真之助/録音:西井憲一/音楽:斎藤一郎/美術:仲美喜雄
【出演者】
高峰秀子、三浦光子、香川京子、村田知英子、根上淳、小沢栄太郎、浦辺粂子、中北千枝子、滝花久子、植村謙二郎、丸山修
それぞれ父親の違う四人の子供たち。母はそれをそのまま受け入れて暮らしているが、末っ子の清子(高峰秀子)は姉や兄たちの身勝手で無気力な生き方に生理的な嫌悪を抱いている。山の手の世田谷で一人下宿生活を送っているのもそのためだ。次女の光子(三浦光子)が飼っている子猫のように、弱々しい生きものとして周りの世話になりたくないのだ。林芙美子の同名小説は1936年に発表されたもので、実母をモデルにしたものだと言われている。監督の成瀬巳喜男は、戦前の松竹時代から林芙美子に関心を抱いていたが、映画化の機会をもてないままであった。この作品は『めし』(1951)に続く林文学の映画化である。下町の庶民の姿をいたずらに劇化することなく、静かに見つめているところに特徴がある。田中澄江脚本。「キネマ旬報」ベストテン第2位。
増村保造×若尾文子
- 『華岡青洲の妻』
- 1967年/大映(京都)/白黒/シネマスコープ/99分
【出演者】
倍賞千恵子、中山仁、伴淳三郎、有島一郎、千秋実、太宰久雄、渡辺篤、小沢昭一、北林谷栄、桜京美
有吉佐和子の同名原作を、新藤兼人の脚本を得て増村保造が映画化した作品。日本初の麻酔薬の開発者として名高い、紀州の医師華岡青洲をめぐる母と妻の葛藤を中心に描いている。加恵は青洲の母お継に憧れて21歳で華岡家の嫁となった。京都で医学修行を積んでいた夫が帰国するのは3年後である。やがて、加恵をさしおいて、なにくれとなく夫の世話を焼く姑は加恵のなかでライバルとなっていく。嫁と姑のひそやかな対立をよそに、青洲はひたすら麻酔薬の研究に打ち込んでいった。動物実験の段階を終えて、人体を用い効果を試すべきときがきた。その時、自ら実験台になることを申し出たのは二人の女、母と妻であった。譲らない二人に、青洲は同じように薬を与えるのだったが…。増村保造はこの映画化に熱心で、企画会議で永田雅一社長に訴えて製作許可を得た。増村自身は、女の戦いを利用しつつ薬を完成させた華岡青洲に魅力を感じていたらしい。「キネマ旬報」ベストテン第5位。
山田洋次×倍賞千恵子
- 『愛の讃歌』
- 1967年/松竹/カラー/シネマスコープ/94分
監督・脚本:山田洋次/原作:M・パニョール/製作:脇田茂/撮影:高羽哲夫/照明:青木好文/録音:小尾幸魚/音楽:山本直純/美術:梅田千代夫
【出演者】
倍賞千恵子、中山仁、伴淳三郎、有島一郎、千秋実、太宰久雄、渡辺篤、小沢昭一、北林谷栄、桜京美
フランスの劇作家、マルセル・パニョールの「ファニー」を翻案した作品。舞台はマルセイユから瀬戸内の小さな島に置き換えられ、その豊かな自然を背景に、若い男女の恋の行方が綴られている。遠くブラジルをめざす青年と故郷に残る娘の物語である。二人をとりまく老人たちに、伴淳三郎や有島一郎、渡辺篤といった芸達者たちを配し、人情味たっぷりの世界が、おかしく、悲しく描き出されている。平凡な恋、平凡な人の営みのなかにこそ、本当の喜びや悲しみがある――。そこには、この翌々年から「寅さん」シリーズを生み出していく、山田洋次監督らしい姿勢が一貫していると言えよう。ひたすら耐えるヒロインの姿は、山田洋次が求める女性像と重なる。なお、この島こそ、いま上関原発に揺れる地であり、「あのなつかしく美しい風景に原発は似合いません。止めてほしい」と山田は語っている。