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決定版・刀装具鑑賞入門
(2019.9.18更新)
展示資料

牡丹獅子図つば 銘 増田明珍紀 宗胤鍛煉之/
天保四年八月日 伊藤正常彫之

天保四年(1833年) 大阪歴史博物館蔵(勝矢コレクション)

>牡丹獅子図鐔

明珍(みょうちん)姓の職人は甲胄師の系統に多く、総じて鉄に精通し、鉄鐔(てつつば)にも多く関与しました。この作品は明珍宗胤(そういん/むねたね)が鍛えた鉄地に、武州伊藤派の流れを汲む鐔工、伊藤正常(まさつね)が牡丹獅子を濃密に彫り上げた贅沢な合作です。濃厚な彫りからは入念さがうかがえます。


鯉図小柄こづか  銘 東嶽子 石黒政常(花押)

江戸時代(18~19世紀) 大阪歴史博物館蔵(勝矢コレクション)

鯉図小柄

石黒政常(いしぐろまさつね)は18世紀から19世紀にかけての江戸の金工です。石黒派の真骨頂は絢爛(けんらん)な花鳥表現にあると言われますが、この作品にはまた異なる趣があります。鯉は的確な肉取りに朧銀(ろうぎん)地に金をすりはがすことで質感を表し、その印象深い技術を裏面にも反映することで全体の世界観をまとめあげています。この作品は、政常が絢爛豪華な花鳥表現だけでなく、さまざまな表現技術を持つ金工だったことを伝えています。


関羽かんう留守模様図小柄こづか 銘 後藤光美(花押)

江戸時代(19世紀) 大阪歴史博物館蔵(勝矢コレクション)

関羽留守模様図小柄

後藤光美(みつよし)(1780~1848)は幕府お抱え金工の後藤宗家の十五代目の金工で、赤銅魚々子(ななこ)地に高彫色絵の家風に則った作品を多く残しています。この作品は縦図の小柄に青龍刀を表し、三国志で有名な関羽の存在を暗示しています。このように、主体をあえて表さず、主体の持ち物を表現することで暗示する表現を留守模様といい、粋な表現として好まれました。


煮干図三所物みところもの 銘(小柄・笄)乙柳軒味墨(花押)

江戸時代(19世紀) 大阪歴史博物館蔵(勝矢コレクション)

煮干図三所物

(写真は部分図)

刀装具の世界では古来、小柄(こづか)、笄(こうがい)、目貫(めぬき)の3点で意匠を揃えたセット品を三所物と呼びます。この作品は江戸の金工、浜野派四代目の政信(まさのぶ)(1773~?)の作で、黒みの強い朧銀(ろうぎん)(銀と銅の合金)を用い、しわがれた煮干の質感を線刻で巧みに表現した味わいある作品です。19世紀になると細密性や質感を追求した刀装具が数多く作られるようになりますが、この作品もそんな時代相を反映しています。

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