大阪歴史博物館では、平成24年4月4日(水)から5月28日(月)まで、8階特集展示室において、特集展示「中村順平 建築芸術の探究」を開催いたします。
今から125年前の明治20年(1887)、大阪に生まれた中村順平は、フランスのエコール・デ・ボザールに学び、日本人初のフランス政府公認建築士(D.P.L.G.)となりました。彼が留学した大正時代後半、日本では、建築を芸術よりも工学として捉える機運が優勢でした。しかし、彼はボザールで学んだ建築論や絵画的な図面表現を日本に根付かせ、また弟子たちへの教育を通して、日本における建築芸術の確立に尽力しました。本展では、精緻を極めた設計図面や思考過程をたどるスケッチ、日本独自の建築美学を追求した著書『建築という芸術』の自筆原稿などを展示します。
当館では、平成19年(2007)にも特集展示「生誕120年 大阪が生んだ異才 建築家・中村順平」を開催し、彼の経歴と作品を紹介しましたが、ここ数年で図面のCAD化や建築の構造・コスト重視が一層進み、建築の美しさや芸術的表現への関心は薄れつつあります。今回は建築芸術の探究者としての中村順平に焦点をあて、その再評価を試みるものです。中村順平の作品を通して、芸術としての建築を再考する一助にしていただければ幸いです。