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  5. 第34回特集展示「発掘!近世大坂ちゃわん工房」

(H25.7.26更新)

第34回 特集展示

発掘!近世大坂ちゃわん工房

 ◆ 平成17年 5月25日(水) 7月18日(月) ◆ 
毎週火曜日休館

会 場
8階 特集展示室

時 間
9:30~17:00(金曜は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで

観覧料

本展示では、近年の大坂城跡や蔵屋敷跡の発掘調査で見つかった、陶器を焼く窯の跡や焼き損じた陶片、窯道具といった資料およそ100点をもとに、近世都市大坂の市中において行われた陶器づくりのようすをわかりやすく紹介します。

江戸時代の大坂で焼かれた陶器は、使用する窯や焼く温度などから大きく2種類に分けることができます。
 まずひとつは、小規模な窯を用いて低火度で焼かれた「軟質施釉陶器(なんしつせゆうとうき)」と呼ばれる陶器です。これらのなかには豊臣期大坂城跡や城下町跡から出土する樂焼系の黒茶碗をはじめとする茶器類があり、近年の研究から大坂で焼かれた可能性が高いとされています。また、江戸時代を通じて、灯明器などの雑器や土製玩具といったさまざまな製品が焼かれました。蔵屋敷跡の下層で見つかった堂島窯跡では、これらの陶器を焼いた小型窯が見られました。今回、切取って保存した遺構そのものを展示します。この窯の技術は大阪のやきものとして今も残る吉向焼(きっこうやき)や、京都・樂焼、堺・湊焼などにつながると考えられます。
 もうひとつは、「連房式登窯(れんぼうしきのぼりがま)」という大型の窯によって高火度で焼かれた、京焼に似た硬質の陶器です。堂島窯跡からは「連房式登窯」も見つかりました。茶碗や向付(むこうづけ)、鉢などが焼かれました。繊細なつくりや絵柄をもち、工房の技術の高さがうかがえます。細部の特徴などから、17世紀後半の文献で紹介され現在まで作品が伝えられる「難波焼(なにわやき)」や、これまで京焼と報告されてきた大坂の出土資料の一部とも共通点があり、京焼と同様の技術が大坂にも存在したことがわかります。


期間中の関連行事

当館学芸員による展示解説

平成17年6月18日(土)午後2時から(約30分間)

※参加料は無料(ただし常設展示観覧料が必要)です。
上記の時間に会場(8階特集展示室)へお越しください。


おもな展示資料
軟質施釉陶器黒茶碗・緑彩茶碗・水滴など

軟質施釉陶器黒茶碗・緑彩茶碗・水滴など
中央区大坂城跡・城下町跡出土 16~17世紀

展示資料数:  
およそ100点
堂島窯跡発見の小型窯

堂島窯跡発見の小型窯(切取った遺構を展示)
福島区福島1丁目所在遺跡出土 18世紀

堂島窯跡出土陶器

堂島窯跡出土陶器
福島区福島1丁目所在遺跡出土 18世紀

おもな展示資料

軟質施釉陶器黒茶碗・緑彩茶碗・水滴など

(1) 軟質施釉陶器黒茶碗・緑彩茶碗・水滴など 
なんしつせゆうとうきくろちゃわん・りょくさいちゃわん・すいてきなど

  中央区大坂城跡・城下町跡出土
  16~17世紀
  大阪市文化財協会保管

「軟質施釉陶器」は小規模な窯を用いて低火度で焼かれた陶器の総称。黒樂に似た黒茶碗、白地に緑色が鮮やかな緑彩茶碗、異国人や動物といったさまざまな造形が目を引く水滴などがあり、豊臣期の多彩な陶磁器のなかでも少数ながら特徴的な存在である。

堂島窯跡発見の小型窯

(2) 堂島窯跡発見の小型窯
  どうじまようあとはっけんのこがたよう
(切取った遺構を展示)

  福島区福島1丁目所在遺跡出土
  18世紀
  大阪市文化財協会保管

釉薬を掛ける前の素焼、あるいは「軟質施釉陶器」など低火度の焼成を行うための平面鍵穴形をした小型の窯。現存する近世後期~現代の窯や京焼の陶法を記した文献の図などから、桶形に焚口を付けた形の窯であることがわかる。連房式登窯とともに見つかり、当時の陶器工房を復元するうえで大きな手がかりとなる。大阪市内で唯一の発見例であるとともに、全国的にも数少ない貴重な発掘成果である。

堂島窯跡出土陶器

(3) 堂島窯跡出土陶器
 
 どうじまようあとしゅつどとうき

  福島区福島1丁目所在遺跡出土
  18世紀
  大阪市文化財協会保管

連房式登窯で焼かれた硬質の陶器は、京焼に似た上質のつくりで、草木や水鳥といった繊細で優美な絵柄を特徴とする。人形や草葺きの家を表した香炉などの造形の表現もおもしろい。その他には焼き締めの擂鉢、小型窯で焼かれた軟質施釉陶器がある。