1. ホーム
  2. 展示・イベント
  3. 常設展示
  4. 常設展示更新
  5. 過去年度の展示更新
  6. 土蔵雛形

造幣局 桜の通り抜け

(H26.6.10更新)

平成24年4月11日(水)~ 5月7日(月)(予定)

浪花川崎鋳造塲の風景
浪花川崎鋳造場ちゅうぞうじょうの風景
明治4年(1871) 関西大学図書館所蔵
明治4年2月に開業した造幣寮(現造幣局)は、当時の人々にとって文明開化の象徴でした。大阪には、貨幣製造工場のような西洋文物や風俗を描いて、名をあげた浮世絵師がいました。この絵の作者・長谷川小信このぶ、後の二代長谷川貞信(1848-1940)です。小信は複数の版元から造幣局を描いた作品を出していました。
浪花川崎鋳造場之図
浪花川崎鋳造場之図
明治4年(1871)頃 関西大学図書館所蔵
これも創業間もない造幣局を描いた小信の作品です。心斎橋の著名な書籍商綿屋喜兵衛から出版されました。小信は同じ構図でタイトルも同じ作品を大阪天満宮近くの「大清」からも出しています。大清版の作品では、桜の宮の桜は描かれるのに対し、造幣局のそれは描かれていません。桜は、開業してしばらく経った桜の季節に移植されたことをうかがわせます。
(参考)浪花川崎鋳造場之図(大清版)
(参考)浪花川崎鋳造場之図(大清版)
浪花真写川崎鋳造塲
浪花真写川崎鋳造場
明治4年(1871)頃 関西大学図書館所蔵
「浪花川崎鋳造場の風景」と同じ、中判三枚続きの作品です。中判一枚ごとに人物を配置して、その背景に桜並木を描くという構図は歌川国明「浪華桜宮遊覧」などにもすでに見られ、小信もそれにならったのでしょう。ただし、小信が背景に選んだのは桜の宮ではなく、その対岸の造幣局の桜並木でした。
桜の宮より造幣局を望む
桜の宮より造幣局を望む
明治28年(1895) 本館蔵
明治28年に発行された大阪名所絵シリーズの一つです。このシリーズは、造幣局の通り抜け(この年は4月13日から同15日まで)に合わせるかのように4月18日に出版されました。踊る子どもたちなどを描くことによって、春の到来に高揚する人々の気分を表現しています。原画の作者は、林基春はやしもとはる(1858-1903)。大阪天満生まれの浮世絵師です。
桜の宮より造幣局を望む図
桜の宮より造幣局を望む図
明治36年(1903) 個人蔵
これも名所絵シリーズの一つですが、こちらは大阪で第5回内国勧業博覧会が開催された明治36年発行のものです。おそらく、内国博見学を目的に来阪した観光客目当てに発行されたものでしょう。発行日は3月30日。こちらも花見の季節です。内国博が開催されたこの年の通り抜けは、特別に5日間開催されました(それまでは晴天3日間)。構図は28年発行のものとよく似ていますが、造幣局の桜については、28年のものはまばらに描いているのに対し、36年は沿道一杯に描くという違いがあります。この間の桜の成長を物語っているのでしょうか?

なにわの風物詩「造幣局の通り抜け」の歴史は古く、明治16年(1883)に始まりました。しかし、桜そのものの歴史はもっと古く、江戸時代にまでさかのぼります。造幣局建設予定地にあった藤堂藩蔵屋敷の桜が造幣局開業にあわせて移植されたと言われています。ただし、移植の正確な時期ははっきりわかっていません。今回紹介する錦絵には、移植の時期を確定する手がかりが含まれていると考えます。

博物館では、3月に「歴博でお花見しよ。」をコンセプトに「えんそくのしおり」第3号を発行しました。大阪城公園の桜もちょうど見頃です(13日現在)。通り抜けも17日から始まります。ぜひこの機会にしおり片手に「お花見」にいらしてください。(飯田直樹)

フロア / 10階 コーナー / 難産業の展開
7Fフロアマップ